こんにちは、Gorian91(@gorian91)です。
ブログで自身のベッカー筋ジストロフィーの体験を元に記事をよく書いているのですが、病気について詳しく解説した記事がなかったのでまとめてみました。
筋ジストロフィーは、遺伝性の筋疾患
筋ジストロフィーは、骨格筋の変性、壊死による筋力低下を主な特徴とする「遺伝性の筋疾患」のことです。
筋ジストロフィー(きんジストロフィー)とは、筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称である。発症年齢や遺伝形式、臨床的経過等から様々な病型に分類される。その内、最も頻度の高いのはデュシェンヌ型である。
筋ジストロフィーのジストロフィー(dys trophy)とは、異常な(dys)、栄養不足などからくる萎縮(atrophy)から来ています。
よく似た病気として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とごっちゃにされますが、ALSは、脳や末梢神経からの命令を筋肉に伝える運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気で、筋細胞が壊死することで筋力低下を引き起こす筋ジストロフィーとは全く別の病気です。
筋肉を構成する正常な筋細胞では、ジストロフィンと呼ばれる蛋白質が、筋細胞の維持に重要な役割を果たしているのですが、このジストロフィンが何らかの理由により、欠損、あるいは異常があることで、筋細胞が正常に維持できなかったり、筋細胞の壊死することで、筋力低下を引き起こします。
ジストロフィンが欠損している場合は、筋細胞の壊死が早いため、筋力低下の早いデュシェンヌ型となり、ジストロフィンは発現しているけれども、異常があって量が不足している場合は軽症であるベッカー型となります。
医師によると、ベッカー型の筋ジストロフィーの筋力低下は、健康な人が常にフルマラソンをしているようなペース筋肉が減っていっているそうです。
病態によって様々な種類がある
病気の主な特徴は、運動機能の低下ですが、実は、知的障害、発達障害を合併症として引き起こすタイプもあります。
一口に筋ジストロフィーと言っても、肢帯型、先天性、顔面肩甲上腕型、筋強直性、エメリー・ドライフス型、眼咽頭筋型など、多くの種類があります。
僕は医者ではありませんから、全ての型について専門的な知識を持ちあわせていません。なので、この記事では、私が当事者であるベッカー型の筋ジストロフィーと、病気の原因が類似しているデュシェンヌ型について取り上げていきます。
社会のイメージの元となっているデュシェンヌ型筋ジストロフィー
筋ジストロフィーの中で、最も発現頻度が高く、重症であり、有名な型がデュシェンヌ型の筋ジストロフィーです。
難病の中では比較的高い確立である3,500人に1人の割合で男児に発症するとされ、なおかつ、非常に重度の障害であることから国でも支援が進んでいます。
最近では、病気のメカニズムが解明されつつあり、近日中に臨床試験が開始されるとニュースになりました。
漫画やアニメでも取り上げられており、世の中の筋ジストロフィーという病気に対するイメージの元になっているのではと思います。
有名なものでは、井上雄彦さんの漫画「リアル」に出てくるタイガースの選手であるヤマが、車椅子に乗った姿で描かれ、数年後には、寝たきりに近い状態として描かれています。
具体的な病名は出ていなかったと思いますが、描写を見る限り、ヤマはデュシェンヌ型の筋ジストロフィーの可能性が高いといえます。
最も軽症で症状が見えにくい、ベッカー型の筋ジストロフィー
一方、筋ジストロフィーの中でも、比較的症状が軽い型が、ベッカー型の筋ジストロフィーです。
このタイプは、筋力低下はあるものの、デュシェンヌ型に比べると進行が遅く、中には60代で歩ける方もいるそうです。
個人差が大きいため、早い年齢で発症して20代で歩けなくなる人もいる一方、50代、60代となっても車椅子に乗らない人もいます。
私は今年で28歳になりますが、階段はのぼれない、坂道を歩くのがしんどい、転倒しやすいなどの症状はあるものの、今のところ日常生活に支障はありません。
参考1. 【ベッカー型筋ジストロフィー闘病記録:1】筋ジストロフィーの症状と注意すべきこと
参考2. 「一番怖いのは、使えなくなること。筋肉がない分、最大限に使うためにはどうするかを考えるようにしています。」希少難病当事者インタビュー:遺伝性の筋疾患ベッカー型筋ジストロフィー
一口に筋ジストロフィーといっても、人によって症状は様々。筋ジストロフィーだからといって、全員が全員車いすに乗っているわけではなく、一見健康そうにみえるけれど、実は病気で悩んでいるというケースもあります。多くの人に認知された難病である反面、誤解の多い病気であるともいえます。
筋ジストロフィーの遺伝形式
次に、筋ジストロフィーの遺伝について解説します。
X連鎖劣性遺伝とは?
この病気は、ジストロフィン遺伝子の欠損によって引き起こる病気です。ジストロフィンというのは、人間の遺伝子を構成する一部であり、この病気は親から子へ遺伝します。
デュシェンヌ型、ベッカー型の筋ジストロフィーは、「X連鎖劣性遺伝」という遺伝形式で遺伝します。
X連鎖劣勢遺伝の「X」とは、生物の性別を判定する遺伝子の一部であるX染色体のことを指し、このX染色体を構成する一部(ジストロフィン遺伝子)に異常が出ることによって病気が発症、もしくはキャリア(発症はしないが病気の遺伝子を受け継いでいる状態)になります。
この遺伝子の異常は、親から子へ、子から孫へ遺伝していきます。ただ、先にも書いた通り、この病気は「X連鎖劣性遺伝」という遺伝形式なので、100%遺伝するわけではありません。
言葉ではわかりづらいので、手書きの図を元に解説してみます。
上は父親が病気の原因遺伝子を持っていた場合について、下は母親が病気の原因遺伝子を持っていると仮定した図になっています。赤丸で囲ったXが病気の原因遺伝子と思ってください。
「キャリア」は、病気の原因遺伝子を持っているけど病気は発症していない状態で、「発症」は文字通り筋ジストロフィーが発症している場合を指します。
子供が生まれるとき、親の性染色体を各1つずつ受け継ぐそうで、病気の原因となる異常な遺伝子を受け継いだときに限り、病気が発症する可能性が生まれます。
例えば、父親が原因遺伝子を持っていた場合、娘に病気の遺伝子が受け継がれて、娘は病気の「キャリア」となります。子供が女の子の場合、病気の原因遺伝子が受け継がれても病気は発症しません。
なぜなら、女性はX染色体が2つあるため、片方のX染色体に異常があっても欠損部分が補完されるので、発症しないことが多いんだそうです。(ごく稀に発症するケースもあります)
次に、母親が原因遺伝子を持っていた場合ですが、図を見ていただくとわかる通り、子供が生まれると、息子に原因遺伝子が受け継がれる可能性と、受け継がれない可能性が出てくるんですね。
まとめると、父親が病気の原因遺伝子を持っていた場合、50%の確立で娘がキャリアとなり、25%の確率で自分の孫に発症する。母親が病気の原因遺伝子を持っていた場合、50%の確立で娘・息子に遺伝することになるわけですね。
もし女性が病気の原因遺伝子を持っていることに気づかず子供を生んだとしたら、突然、自分の子供に病気が発症する可能性が考えられます。
なので、病気の遺伝子を持っているかどうか気になる方は、女性なら両親とその親族を、男性の方は母親、祖母に病気の遺伝子があるかどうかを調べれば、ある程度、病気かどうか予測をつけることができわけです。
まとめ
以上、筋ジストロフィーについての解説でした。
この記事はあくまでベッカー型筋ジストロフィーの当事者である私が、素人なりに調べてまとめた内容です。この記事を書いた筆者は医者ではありません。
記事の内容はあくまで参考程度に読んでいただき、より正確な情報を知りたい場合は、医学書を読んでいただくか、「神経内科」の専門医に聞いてみることをおすすめします。
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