あなたは有名なラーメン屋さんの前で、もう30分以上並んでいます。
この日は5月とはいえだいぶん気温もあがっており、汗をかくほどです。
いよいよ店内に入れるというタイミングで、前に並んでいた男性が、列のなかに別の男性を入れました。杖をついた全盲の方から「列に入りたい」とお願いされたそうで、先頭に並ぶことになりました。
皆さんならどう対処しますか?
私自身、軽度の肢体不自由であることから、この問いかけに対して、思うところがあったので、個人的な意見を書いてみようと思います。
特別扱いを受けたくない障害者もいる
私は、全盲ではありませんが、身体的に不自由があり、長時間並んでいて、仮に、疲れていたとしても、病気を理由に順番を譲ってもらうことは絶対にしません。
何故かといえば、僕が当事者なら特別扱いを受けたくないからです。
高校生の頃、バス通学をしていた私は、バスの一番後ろに座っていました。
バス停について降りる時、当時、サッカー部の態度大きめのクラスメイトが、親切心で、「この子病気で足弱いから先下ろしたって!」と言ってくれました。
本当に親切心で言ってくれたのだと思います。気にかけてくれることは嬉しいことですし、本来は喜ぶべきことなのかもしれません。
しかし、この後、腫れ物を見るような、突き刺すような視線の中、みんなが先を通してくれて、バスを降りました。この時、とても恥ずかしい思いをしましたし、そして、同時に、嫌な気持ちにもなりました。
特別扱いをされることは、不快な気分にさせてしまうこともあるのですね。
私の場合は軽度の肢体不自由ですが、想像するに、障害のある方は、特別扱いを嫌っているは多いのではないでしょうか。
「列に入りたい」は、「順番を譲って欲しい」なのか?
今回の問いかけに対する議論を見ていると、順番を譲るか否か、について議論されています。確かに、全盲で杖をついた方から、「列に入りたい」と言われれば、ほとんどの方が、「順番を譲って欲しい」と解釈するでしょう。
しかし、当事者の視点になって考えてみると、全盲なのだから、列の最後尾が見えなくて並ぶに並べない状況であることが推測されます。
仮に私が全盲で、列が見えなければ、列に並んでる人を探して、「列に並びたいのですが、案内してもらえませんか?」と聞くと思います。ここに、「順番を譲って欲しい」という意図はありません。
でも、このような状況では、目に見えないから苦労しているという想像が働き、「順番を譲って欲しいのかな」と想像してしまうのではないでしょうか。
「列に入りたい」という言葉には、「順番を譲って欲しい」という意図はなく、おそらく単純に見えてなくて、「列に並びたい」だけなのだと思うのです。視覚障害のある知人は、特別扱いを極端に嫌い、順番を譲ろうものなら、本気で怒られると思いますw
単純に、列が見えなくて、最後尾がわからないのかなと思って、どれくらいの人数が並んでいて、お店に入るまでどのくらいの時間がかかるのかを伝えた上で、最後尾に案内すると思います。
どうしたいのかを、きちんと「聞く」ことが大切
結局のところ、ご本人がどうしたいのかをきちんと「聞く」ことが大切です。
「列に入りたい」は、「順番を譲って欲しい」という意味なのか、単に「列がどこにあるのかわからない」だけなのか。本人が何に困っていて、どのようなサポートを求めているのか、話を聞くことで、互いに気持ちの良いコミュニケーションが取れるのでしょう。
文章でこういうことを書いているものの、実際にそのような場面に出くわすと、びっくりしてしまって、対処に困るのが正直なところ。相手の気持ちを考えて、わからなければ素直に聞く。当たり前のことを、自然にできる人ってとても魅力的ですよね。
ちなみに、このような、障害のある方への接し方について学べる検定があったりするので、興味がある方は、ぜひ受講してみてはいかがでしょうか。