こんにちは、Gorian91(@gorian91)です。
少し前、難病について広く知りたいと思い手にとった「難病カルテ」という本が、当事者のリアルな生活を捉えた素晴らしい内容で、ぜひほかの人にも読んでもらいたいと思ったのでご紹介します。
難病当事者のリアルな生活が丁寧に描かれている
何気なく買った難病カルテがすごい本だった。難病の当事者のリアルな生活が丁寧に描かれてる。生活のどういう場面で困りどこに生きづらさを感じているのかがすげーよくわかる。当事者もその周囲の人にとっても参考になると思うので関わりのある人は絶対に読んだ方が良い。
— gorian91 (@gorian91) 2016, 2月 10
「難病カルテ」では、全部で71の難病当事者の日常がインタビュー形式でひとつひとつ病気ごとにまとめられており、短編集のような形式に編集されています。
また、当事者のインタビューだけではなく、各内容の合間には、障害者年金の制度、国の難病対策、支援団体、就労支援のことなど、難病に関わるあらゆる情報がつめ込まれているのも大きな特徴です。
本書にも書かれているのですが、難病というのは症状が人それぞれで、100人いれば100人の悩みがあり、それぞれが抱えている課題や問題も全く異なります。たとえそれが、同じ病気であってもです。
この本のすごいところは、その多種多様でわかりづらく複雑な難病の現状を踏まえた上で、その複雑な難病の現状に近づくきっかけを提供しているという点です。まえがきではこのように書かれています。
筆者として最も意識したのは、病気を抱えている人がどのような暮らしをしているのか、患者としての生き方がいかに多様であるかを伝えることだった。そのことが「難病」というわかりづらく複雑な現状について、近づくきっかけにつながりうると考えたからだ。
はじめに – 難病カルテより引用
難病の当事者ではない筆者が、難病の当事者の生活をここまでリアルに描けているのは、普段から当事者の方と密な接点を持っているからだと思うし、難病についての相当な理解があるからだと思う。
僕はベッカー型筋ジストロフィーの当事者だけど、自分自身を「障害者」と思ったことがないので、国からの支援は受ける気がなかったし、それゆえ、社会制度について全くといっていいほど知らなかった。
何気なく手に取り読んだこの本に、難病について詳しく書かれているとは思っていなかったので、非常にありがたい、というのが正直な感想。
この一冊を読めば、「難病当事者の日常」や「難病に関する社会制度」について広く浅くではあるものの、一通り学べるようになっています。
同じ系統の病気でも、悩みや抱える問題は人それぞれ全く違う
呼吸器・骨・関節の疾患、視覚・皮膚・結合組織の疾患、神経・筋の疾患など、全部で7つのカテゴリーに分類されて書かれており、僕が当事者である筋ジストロフィー(顔面肩甲上腕型・デュシェンヌ型)についても書かれていました。
やはり一番記憶に残ったのは、自分と同じ筋ジストロフィーの病気である顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの事例。
ベッカー型は、体の中心の筋肉から弱っていく一方、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、肩から上の顔や肩、首の筋肉が弱っていきます。
するとどうなるか。
食べるときに口を動かしづらくなったり、表情を作ることができなくなったりするみたいなんですね。
そんな体だと、学校では友人に「ポーカーフェイスだよね」と言われたり、学校の教師に「もう少し笑顔をつくりなさい」と言われて悔しくて涙が流れたと書いてありました。
このエピソードを読んで同じ病気でもこんなにも悩んでいることが違うのかと衝撃を受けたし、なんてひどいことを言う教師がいるんだと怒りもこみ上げてきた。
なんかもう、読んでいると色んな感情が沸々と湧いてくるんですよね。
教育に携わっている「教師」にこそ読んでもらいたい
難病というのはいつ誰に降りかかってきてもおかしくない。
筋ジストロフィーは遺伝性の病気だけど、難病と呼ばれる病気の中には、そうじゃない病気だってあるし、明日から突然、難病になる可能性だって否定できない。
それなのに、理解を示している人があまりにも少ない。
特に学校という場所は、毎年色んな学生がやってくるのだから、難病の知識を持った教師が多少なりともいていいはずだ。
少しでも難病についての知識があれば、生徒の異変にだって気づくだろうし、こんなひどい言葉は絶対に出てこないと思う。
僕はこのエピソードを読んで、まず教育に携わる教師にこそ読んでもらいたいと思った。
難病の方は、僕が聞いた限りではあるけど、学校で嫌な思いをしていることが多い。そして、ほぼ例外なく、無知な教師の言葉に傷つけられている。
学校では個別の生徒のニーズに応じた対応が難しいことくらい100も承知だけど、せめて、言葉で当事者を傷つけることはやめてもらいたい。
たとえそれが、無意識のことであってもだめだと思う。
難病の当事者に支援者、難病に関わる全ての人に読んでもらいたい
この本は、難病の当事者にとっては、こんな病気で戦っている人がいるんだと勇気づけられるだろうし、支援する立場からすれば、生活のこういう部分で悩み、生きづらさを感じているんだと知るきっかけになる。
本書の中で、難病の記事を書き続けることは、「関心の種を蒔く」ことだと表現している。僕はこの言葉に強く共感する。
書き続けなければ、誰かが伝えようとしなければ、少数派の声は無視されてしまう。だから僕は、ブログという形で記事を書き続けている。
繰り返すけれど、難病はいつ誰に降りかかってきてもおかしくない。
だからこそ、多くの人に難病のことを知ってもらいたい。
多くの人にこの本が届き、難病について少しでも理解が深まれば良いと願っている。